修士課程を休職してスタートアップに転職しました

はじめに

半分釣りですが、概ねタイトル通りのことをしています。

一応決まり切ったわけではないのですが、今年の10月から交換留学制度を使って留学することになっていて、それまでの半年間休学してスタートアップで働いています。

勤務地は東大構内なのであまり大きく生活が変わったわけではないのですが、フルタイムワーカーとしてやり始めて一ヶ月ほど経ったのでその感想を残しておこうかと思います。

経緯

休学に至った理由を事細かに書くと長くなってしまうので1あえて詳細に書くことはしませんが、ざっくりいうと修士の期間が2年では足りないと感じたからです。

留学することが先にあったわけでもなく、元々は修士課程が短すぎるという感覚が先にあったので結果として休学→留学という流れになりましたが、半年留学してきて帰ってきてからはまたちゃんと修士課程に復帰して学生を1年やります。

修士課程が短すぎると言いつつ修士課程をやっている期間は変わらなくね?という話もあるのですが、自分としては休学と留学をしている期間も自分の勉強/研究のためになると考えているのでこの期間も含めて修士の学生をやっているという感覚です。

さて、その上でスタートアップで働き始めた経緯についてですが、休学を決めてインターンでもするかと思っていたときに誘われたから、というのが大まかな経緯です。

もともと休学期間中にはインターン(メンターがついている、研究要素が少し入っていそうなやつ)に行こうと思っていたのですが面識があった今の会社の社長からお誘いがあり、条件も業務内容もいいと感じたので半年限定という条件付きで働かせていただくことにしました。

業務について

受託のデータ分析や顧客企業の業務自動化の研究開発をしています。

自分は今二つのプロジェクトに関わっていますが、他にもいくつかプロジェクトが走っているようです。主力製品を軸にビジネスをする、というスタイルの企業ではないのでどのプロジェクトも受託中心のようです。

業務内容は「論文を読み、実装をする」に尽きていると言えます。その他にも自分のプロジェクトに関わる環境整備(GPUマシンのセットアップ・docker image作成など)もしていますが実際大したことはしていないので大きなものはやはりリサーチということになると思います。

環境について

10時 - 19時で仕事をしています。2一応当初は9時 - 18時で始めたのですが満員電車が無理だったので変えてもらいました。

オフィスは

このカフェがある建物の中にあります。いわゆるインキュベータ施設の中ということになります。

まだ創業して間もないのでオフィスの中は急ピッチで整えられている最中ですが、まさに期待していたようなスタートアップ感があってなかなか面白いです。

開発環境としては、貸与のPC(多分ある程度までは要望が通る)と手元に1070が入った小型のGPUマシンが何台か3 + GPUありのクラウド環境(必要であれば高性能なGPUありの環境も使える)といった感じです。

その他にもコーヒー飲み放題、お菓子食べ放題、技術書購入は全額補助、昼食代補助など、魅力的な職場環境作りにはかなり積極的な印象です。

1か月働いてみて

1ヶ月で判断できることはあまり多くないので今のところの印象の話になってしまいますが概ね満足しています。

項目順に書いていこうと思います。

環境・待遇面

環境に関しては上に書いたとおりですが、かなりいいと思います。その環境の良さに甘んじすぎず頑張ろうという気分になります。

待遇に関しても不満はありません。自分のスキルセットを考慮したうえでの相場感というものがあまりよく分かっていないのですが、妥当(というかやや多め)に貰っている気がします。半年限定という要素を加味するとかなり好条件だと思います。

仕事に関して

今のところうまく行っています。

1ヶ月やってみて感じたのは、受託のデータ分析プロジェクトの成否を決めるのは営業の腕とマネージャの期待値コントロールのうまさにかかっているところが大きいのではないか、ということでした。

これは何か炎上案件を目の当たりにしたとかそういうわけではなく、逆に今まで関わってきたあらゆるプロジェクトというもの(仕事であるかどうかに関わらず)と比べて最も平穏無事にやれていて、おそらくこの理由はプロジェクトスタート時の条件設定が良かったことに由来しているのではないか、という感覚があるからです。

生活に関して

大きくは変わっていませんが生活時間帯が規則正しくなりました。

4月までは週2で終日インターンをしていたのですがインターンがある日は朝6時起き4で、次の日何もない(大学に行って作業をするかもしれない)日は9時に起きるみたいな生活でしたが、今は朝7時に起きて夜1時ごろに寝る生活が毎日続いています。

忙しさに関しては修士の学生をやっている時と同じくらいでしょうか?1日8時間は仕事をしているので自由に使える時間は減るかと思っていたのですが、案外学生をやっている時の方が細かいタスクが割り込んできたりして時間に追われていた気もします。

多分ですが、学生の方がタスクをスケジュール上にどう配置するかの自由度が高い分調子に乗ってタスクを抱え込みすぎる傾向にあったのかなと思っています。

人間関係について

実際のところあまり社員が多くないので人間関係がこじれることも起きづらいですが、特に何もありません。

お互いに私生活には干渉せず、つつがなくやっていけています。

全体として

学部3年から修士1年にかけてだいぶタスクに追われたりして鬱屈とした日々を送っていた気がするのですが、ここ最近は比較的平穏な日々が送れています。

仕事に関しても毎日学びが多いと感じています。個人的に小さなチームで、1人が受け持つ仕事の範囲が広めである働き方をしてみたいと思っていたのでまさにちょうど望んでいた働き方ができています。5

一方で、リサーチという役割で働く上で自分にはアカデミックな実績がないのが痛いというのもひしひしと感じています。論文を読み、実装をするというサイクル自体はそれなりに回せているかとは思うのですが、アカデミックな実績6が伴っていないと人前に出たときなどになんとなく後ろめたさを感じてしまうのも事実です。今こうして学生に今後戻ることが確かな中でその点に関して実感を持って認識することができたのは幸運だったと考え今後の糧にしていきたいです。

留学という観点で考えると、今の職場は比較的英語を喋る機会が多い7のがよかったです。自分としては英語を話す機会は多ければ多いほどいいのでとても助かっています。

現状何よりも良かったと思っているのは、今後も学生をしばらくやっていく上で、社会人としての視点も今学ぶことができていることです。学生を終えて社会人になるというのはほぼ誰もが通る道ですが、社会人から学生へと回帰する人はそう多くありません。僕が休学してインターンをしようと思っていたことの理由のひとつには社会で何が求められ、何が大事なのかという視点を身に着け、それを研究に生かす8それが今まさにできています。

今のところは一旦休学をして働くという決断が大当たりだったというのが率直な印象です。

今後について

今後に関してはまだまだ不明瞭なことが多いです。とりあえず当面数ヶ月は今の会社で勤めつつ留学の準備をし、留学に行くところまではだいたい決まっているのですが、帰ってきた後どこに就職するか9といったことや、結局修士の研究で何を行うのか10という大きな問題は判断を先延ばしにしているだけでもあります。

その意味で今の平穏な生活はいつまでも続くものではないということを認識して緊張感を持って今後数ヶ月をいきていきたいと思います。


  1. 要望があればまた別の記事で書こうかと思います。

  2. ランチ休憩1時間含めです、念の為

  3. 手元に自由に使えるGPUマシンがいっぱいあるというのは実際のところかなりいいです。バリバリに高性能というわけでもないですがGPUメモリは8GBあるのでほどほどのモデルなら動作しますし、何より手軽に実験を行うことができます。個人的には分散GPUコンピューティングをやってみたい(が何もわかっていない)・・・

  4. 6時半だったかもしれないです。出社は9時半までにする必要がありましたが、埼京線が遅れるので9時ごろ出社するようにしていました。その上で自分は起きてから家を出るまで1時間半くらいなぜか掛かってしまうので早めに起きていました。

  5. 自分の受け持つ仕事としては、データの分析と関連技術の調査、スライド作成、必要であれば計算環境の用意や顧客との意見調整などです。

  6. 論文・発表歴などなど

  7. 英語の面接でインタビュアーをしています。

  8. 僕の研究室はテーマについて学生が各人で勝手に決めることになっています。研究としてやっていけるなら何をやってもいいので皆別々の研究をやっていこうとしますが、完全ソロプレイとも言えるわけで正直なところ自分には自分で自由にテーマを選びやり通すというのは辛いと思っていました。その上で一人でも研究テーマを選びやり通す力を身に着けるというのが学生期間を一年伸ばした大きな理由です。

  9. 今の会社もとてもいいですが、他の企業も見てみたいです。一点心配なのは帰ってくる頃の就活事情がどうなっているのか全くわからないことです。通年採用をやっているような企業を見ようとは思っていますが、そもそも経団連企業含めて通年採用になるという話もあるのでよくわからないです。

  10. 修士に来たからには研究をしっかりとやって成果を出したいという気分はあるのですが今のところ修士1年を使って何も成していない(というかちょっと手をつけてはすぐ目移りしてしまうみたいな感じで上手くいっていない)です。自分の好きなこと・やりたいことをやるといいよと指導教員の先生からは言われるのですが、それを一人でやり通すというのはとんでもなく難しいことな気がしてなりません。最近は博士課程に在籍していたり、博士持ちだったりする人と話す機会も多いですが、博士の方々はそういった訓練を積んできたわけで(と勝手に思っています)、勉強させてもらいたいと思っています。